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Crimson Wolf TOMMY WALKERのPBW≪Silver Rain≫のPC犬神隼人(b28537)の雑記。
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狼の牙  / 雑記 ,CM:0 ,TB:
とある良く晴れた早朝…寒空の下で白い息を吐きながら一人、隼人は寮の屋根にあぐらをかいて座っていた。
屋根の上に器用に腰掛けている隼人の手には神々しく顔を覗かせた朝日に反射し、まるで揺らめく焔のような輝きを放つ紅い刃が握られていた。
柄を中央に配し両端から延びた禍々しいほどの紅い刃を左手に持ち、雪のような白さの粉、獣の骨を細かく砕き粒子にしたものをまぶすと丁寧に綿の布を使って刃を丹念に磨いている。
週に一度、清々しい朝日を浴びながら、寮の地下に広がる闇の住人の棲まう地の底で出逢った愛刀を手入れするのが習慣になっていた。

結社の副長であるファントム卿ことルーツィエの支配する寮の階下に広がる地下室 『棺桶のある地下室』と呼ばれる、最下層はいったいどれだけ奥深くに在るのかルーツィエ以外知らない…いや、ルーツィエ本人すらはっきりとは知らないのかもしれない地底の迷宮。
普段はルーツィエの腹心たるレベッカの管理する比較的安全な浅い下層にしか足を運ぶ事はないが、鉄斎と隼人だけはお仕置きと称した極刑で魑魅魍魎の跋扈する地獄の底へと叩き落される事がある。
月のエアライダーである隼人は落下に関してはなんら被害を受ける事はないが、まるで地獄絵図と言っても過言ではないかの地から生還してくるのは命懸けの事である。
初めて落とされた時には常人では目で捉える事すら許さないいスピードを生み出す脚力のおかげで無我夢中で闇の住人の間をすり抜け逃げ帰り生還できたのを覚えている。
だが、生粋の武闘派揃いの“戦”の面々ですら恐れる地下室がそうそう何度も脚だけで逃げ切れるような生温い場所のはずもなく。
あれは確か、3度目に落とされた時の事…あれは果たして何階層だったのだろうか?…それが隼人の手に握られた双刃の短刀 獣魔刃《牙狼》との出逢いだった。

いつもの様に鉄斎がルーツィエの神経を逆撫でし落とし穴に落とされた際、近くにいた隼人が咄嗟に鉄斎に掴まれ巻き添えをくらたっ時の事。
隼人自身がルーツィエに落とされる事は稀であり、落とされる階層も考慮されたものだがその時ばかりは状況が違った。
鉄斎が落とされる程の場所である、本当に命懸けな上、落下ダメージを軽減する為鉄斎に踏み台にされた事で鉄斎ともはぐれてしまったのである。
空中で体を捻り何回転かして体勢を立て直し着地したその地では、隼人の野性の本能が空気を通して全身にビリビリと伝わってくる危険をありありと感じとっていた。
「…い、いや…ここはマジでヤバいでしょ?」
顔を強ばらせた隼人の額からは肌寒くすらある地下にあって冷や汗が滝のように流れていた。

不幸中の幸いか隼人の降り立った場所は闇の住人の気配がなかった。
全神経を集中させ、奇襲に対応できるよう警戒しながら慎重に地上へと続く道を探した。
地下室とは思えない広さをを誇るこの地底の迷宮において、隼人は自慢の鼻を駆使して上から流れてくる新鮮な空気を嗅ぎ分け先へと進んでいた。
おそらくここが上の階層へと続く階段のある部屋と思われる一室にたどり着く。
部屋に入った隼人はなんとなく見覚えのある室内に一瞬デジャヴかと錯覚したが、すぐに以前父親との遺跡調査の際に発掘したことのある超古代文明の神殿と良く似た造りだと気付いた。
そして、部屋の奥に見えた階段とその前に佇む祭壇を視界に捉えた時、隼人は何故ここまで闇の住人と遭遇せずにすんだのかを悟った。
「…やっぱり…ひじょーにヤバい気がしたんだよねー…」
定番、お約束、お決まりのパターン…そこにはこの階層から上へと向かう一切の動くものを阻む番人が佇んでいたのだ。
体を丸め横になっていたその番人は隼人の気配を感じとるとスッと立ち上がった。
立ち上がったそれは2mはある鉄斎でさえ見上げるであろう大きさの四足歩行の獣の姿をしていた。
しかも、そのドデカイ狼のように見えなくもない獣には頭が二つあった。正に地獄の番犬の名が相応しい化け物だった。
唯一の救いは頑丈そうな厳つい鎖の束で縛られ行動範囲が制限されているらしいことだった。
だが、目指す階段にたどり着くには十分、双頭の番人のテリトリーに侵入しなければならない。
思案をめぐらせたのも束の間、隼人は深く深呼吸をすると覚悟を決めいつもの小気味のいいリズムでステップをとり徐々に距離を詰め始めた。
一方、番人はというと獣の割には唸り声すらあげず凛とした姿で立っている。雄々しくすらある双頭の獣は隼人が近付くのをじっと見つめたまま動く気配もない。
隼人がステップを踏みながらじりじりと距離を詰め、獣との距離があと10m程に縮まったその刹那。
おそらく隼人の本気のスピードを目にしたことのある“戦”のメンバーですら集中していないと何が起こったのかすら反応できなかったであろう。
祭壇の前…一瞬前まで番人が悠然と佇んでいた場所にその姿はなく…隼人のいた場所でその凶暴さを現した双頭の野獣は獲物を捕らえ喰いちぎらんと二つの顎噛み付いていた。
いつもならこれで狩りは終わっていただろう…しかし、この日だけはいつもと勝手が違った。
噛み砕いたはずの獲物は…鉄屑と化してしまった隼人愛用のナイフだけであった。
「Σ げぇ~!?マジかよ!あれでも一応カスタマイズしてある詠唱兵器だぜ!?」
愛用の武器-しかも鋭い刃のある強化合金製ナイフ-を一瞬でオシャカにされ衝撃を受けた隼人だが、換わりに持ち前のスピードダッシュで双頭の野獣の飛び掛ってきた体をスライディングの要領で潜り抜けすれ違う事に成功していた。
音速を思わせる速度の中で動ける隼人だからこそできた芸当だった。
番人が経験のした事のない自分のスピードについてこれる獲物が存在した事、そこには油断があったであろうことは予測がつくが二度はないだろう。
尋常ではない破壊力を目の当たりにし、次に攻撃されれば確実に命はないだろうと判断した隼人は迷うことなく階段を目指し猛ダッシュを開始する。
が、先程の番人が見せた十分尋常ではない俊敏さはまだ余力を残したものであったことを隼人は思い知らされる事になる。
番人の佇んでいた祭壇の横を通り抜けようとしたその時、自分よりもさらに早いスピードで頭上を飛び越える影に気付いた隼人は反射的に急ブレーキをかけ反動で跳ね上がった体を横回転させて次に襲い掛かって来るであろう獣牙を避けるべく横に跳んだ。
初めて初撃をかわされ恍惚な表情を浮かべながら喰いついた2撃目までも空を切ったことで野獣は狂ったかのように追撃をしかける。
「くっ!次は無理か!?」
そう口から漏らした隼人の体はまだ空中で回転している途中だった。
回転しながら祭壇の上を跳び越している最中、まるでスローモーションのように感じられる瞬間の中で隼人は祭壇の上に置かれたこの地下室にあって煌く焔のような輝きを放つ短刀を見止めた。
自己防衛本能からか体が勝手に動き、隼人はその短刀を掴むと回転しながら迫り来る野獣の顎を切りつけた。
次の瞬間、まったく予想だにしていなかったであろう手痛い反撃を受け、双頭の野獣は左頭の顎を真っ二つに切り裂かれ、この世のものとは思えぬ咆哮をあげのけぞった。
この好機を逃さず隼人は一気に階段を駆け上り、途中の魑魅魍魎も手に握り締めた短刀を使い蹴散らす事でなんとか生還できたのだった。

奇跡の生還を果たした後、隼人は自分の命を救ってくれた短刀をまじまじと見つめた。
全長70cmといったところか、中央に柄があり柄の両端からまるで狼の牙を思わせる湾曲した焔のような紅い刃の短刀。
今まで愛用していた特殊な形状のナイフと似たようなフォルムだったためか初めて手にしたというのにまったく違和感なく扱えたのだ。
おそらくあの番人が守護していたのは地下からの出口だけではなくこの短刀もなのであろう。
よく見ると長い間人の手に触れる事すらなかったであろう刀身には錆び一つなく、むしろうっすらと暖かい日差しのような輝きをはなっている。
「これって…ひょっとして…ヒヒイロカネ?」
太古の昔、日出づる国にあったとされる伝説の金属-ヒヒイロカネ-かの草薙の剣もヒヒイロカネで出来ているとの伝承もある、一説ではオリハルコンと同じ金属ではないかと言われる現代では伝説の金属である。
隼人はかつて父親の発掘調査について回っていた頃、一度だけヒヒイロカネで出来ていると言われる勾玉を見たことがあった。
今手にしている双刃の短刀はまさにそのヒヒイロカネと同じ特徴を見せていた。
「そういえば…あの部屋…どっかで見たことあると思ったら…」
勾玉が奉納されていた超古代文明の神殿と同じつくりだったと思い出した。
「魔獣に護られし刃か…俺と相性もいいみたいだし、よし!決めた!!獣魔刃《牙狼》と名づけよう♪」
父親が帰ってきたら見せて驚かせてやろうと考えつつ、死地を彷徨った事など忘れ信頼できる相棒にめぐり逢えたことを鉄斎に感謝すら覚えたのだった。

「でも、よく生きて帰ってこれたよな~。お前のおかげだぜ相棒♪」
愛刀に話かけながらその出逢いを思いだしていると、下でウチワとコダイの散歩に出かけるはねずを見つけた。
「お、はねずちゃん朝のお散歩?気をつけて行ってくるんだよ~♪」
「あ、犬神せんぱいおはよーございます!」
ウチワとコダイに引っ張られながら屋根の上を見上げるはねず。
「わぁ~♪キラキラしててすっごくきれいですね!」
朝日に反射して煌く隼人の愛刀をみてはねずがキャッキャと騒ぐ。
「ん?でしょ~♪なぜか朝日を浴びると切れ味も良くなるんだよね~、なんでだか不思議なんだけど…」
「ナイフさんも日光浴がお好きなんですね♪」
そんな会話が交わされ今日もドタバタと寮の一日が始まっていく。
これからも週に一度は屋根の上で愛刀を手入れする隼人が見れることだろう。

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プロフィール
HN:
犬神 隼人
年齢:
32
性別:
男性
誕生日:
1991/11/24
職業:
銀誓館学園高等部2年生
趣味:
スポーツ・ゲーム
自己紹介:
クルースニク ×
月のエアライダー


純粋結社“戦”に
入寮中。


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当Blog内の作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして犬神隼人が作成を依頼したものです。  イラストの使用権は犬神隼人に、著作権は各イラストレーターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。


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