『あー、今日も疲れたー。やっぱベンチプレス100kgの壁はあついな~』
アメフト部の練習が筋トレだけだった為いつもよりだいぶ早く帰ってきた隼人は自分の部屋の前に佇む沙紅夜を見つけた。
『あれ?…沙紅夜さん、いつから待ってたんすか?!』
帰ってきた隼人に気付いた沙紅夜は普段の凛然とした彼女からは想像も出来ない恥らう乙女のように顔を朱に染めて言葉を返す。
『お、お帰り、隼人!…その、2時間ほど待っていたが気にするな!!』
嘘のつけない性格の彼女は正直に恋人に思いを馳せながら過ごした時間を口にする。
『∑でぇ~!?に、2時間も待ってたんすか?!携帯に連絡くれればよかったのに!?』
『いや、漆月の方が一週間以上も待たせてしまっていたからな…
…その、すまない、誕生日おめでとう。
何も用意できなかったのだが…これから一緒に食事でもどうだろうか?』
本当に申し訳なさそうに誠心誠意詫びる恋人に愛くるしさを感じ
『気にしてない…って言ったら当日連絡が無かったのは寂しかったから嘘になるっすけど…
沙紅夜さんが最近、仕事で忙しかったのは知ってますし。
怒ったりはしてないっすよ?』
『ほ、本当か?!
…よかった…本当は嫌われてしまったのではないかと…』
恋人の優しい言葉に安堵したのか思わず目を潤ませ言葉につまる
自分の前でだけ見せる乙女の一面…そんな年上の恋人を可愛く思い
『そうやって言い訳もせず純粋に謝られたら怒る気にならないっすよ♪
それより何食いにいきます?
…う~ん…馬刺し食いに行きましょっか♪』
普段、常に漆月家当主として毅然と振舞う事を強いられている沙紅夜にとって、この年下の恋人の前だけが飾らない自分を出せる唯一の場所だ
『もちろん、隼人の好きな所で構わんぞ?
こういう時の為に仕事を頑張っていたようなものだしな。
遅れてしまってすまないが漆月に驕らせてくれ。』
『へっへ~♪
俺が満腹になる頃には沙紅夜さん破産しちゃうかもしんないっすよ?』
『…う、確かに隼人の食べる量だと…
今の手持ちでは心もとないな、一度家に寄らせてくれ。』
『って、冗談っすよ?!
相変わらず真面目っすね…』
苦笑いした隼人に微笑み返す沙紅夜
そこには既にいつもの二人の笑顔があった
月のエアライダー
純粋結社“戦”に
入寮中。