「ぐあぁぁ…！！」

さっきまで鬼と戦っていたはずだった…
全身に疾るズキズキとした痛みに耐えながら周囲を見回すと見覚えのある光景…自分の部屋だった。

改めて自分の身体の状態と状況を把握しようとしたその時、ドアを開けて水を張った桶と手拭いを持った沙紅夜が入ってきた。

「！？…隼人！！」

気がついた隼人を見て沙紅夜が駆け寄る。

「まだ起きてはならん！無茶をするな馬鹿者！！」

目に涙を浮かべながら隼人の身体を支えると沙紅夜は優しく抱きしめた。

「馬鹿者…本当に無茶をしおって！…馬鹿…」

「し…心配かけて…すんません…それより、鬼は！？みんなは！？」

殴られ過ぎて口の中もザクロの様な状態の隼人は痛みに耐えながらゆっくりと言葉を発する。

隼人の言葉に無言で首を横に振る沙紅夜。

「…すまん、力になれなんだ…しかし、重症者は出たが死んだ者はおらぬから安心しろ…」

沙紅夜の言葉にホッとしながらも悶え苦しむ住人を救えなかったこと、自らの作戦が機能しなかった事で仲間まで危険なめに合わせてしまったことに隼人は憤怒した。

「…沙紅夜さんのせいじゃないっすよ…俺が…もっと…くっそぉ…」

己の未熟さ…己の無力さに、噛み締めた唇から流れる血潮が隼人の強さへの渇望を窺わせていた…