桜の季節…
あの人の生まれた季節
寮“戦”の裏山には狂おしいほど美しく咲き乱れる桜の庭園がある
優しい日差しの降り注ぐ中、隼人は桜の大木の豊かな枝に登り一人ぼんやりと桜を眺めていた…
観賞用BGM:http://www.youtube.com/watch?v=MgQpDiOyty8
地面から5mはある高さから枝分かれした逞しい枝の幹に腰掛け赤い髪の少年は先の欧州での戦争を思い出していた。
今まで幾度となく危険な戦場へと出向き、大きな戦果をあげ無傷で帰還してきた若き紅狼
だが、この欧州での戦だけは今までと違った…
いつ命を落とすとも知れぬ死地にあっても恐れを知らぬ獅子奮迅の働きをしてこれた。
その理由は彼を隣で見守り支えてくれた銀の百合のおかげだった。
先の戦いではその美しき銀百合の加護を受けることができなかったのだ…
『…沙紅夜さん…』
ここ数ヶ月、愛しい人の様子がおかしい事には気がついていた。
仕事で忙しい事は知っていたが明らかに会うことを避けられているのを感じていた。
会うのを避けられている理由はわからなかったが、体調がすぐれないのであろうことは狼の嗅覚により体臭の微妙な変化で気付いていた。
今回の戦争でも自分の隣に立つ事はなかった恋人に想いを巡らせてしまった。
戦場ではそんな気の迷いは命取りである。
案の定、たったの3戦目で隼人は敵の人狼の集中攻撃の的となる。
今までであれば難なく回避し逆に敵の懐に飛び込み一蹴しているところだが、気をそらしていた隼人は十字の弾丸に身を焼かれた。
不屈の闘志で4度は立ち上がるも5度目はなかった。
初めて戦争で重傷を負い、その後は野営地で傷の手当を受けたのだった。
からくも遂行必須の目的は果たせた戦だったが、学園の生徒達も過去最大の被害を受けた戦いだった。
ほうほうの体で学園の用意した超大型クルーザーに乗り帰路についた銀誓館の生徒達。
百戦錬磨の“戦”の主戦力の面々も今回は重傷を負ったものがほとんどだった。
船室で包帯を巻きなおしていた隼人のもとに珍しい組み合わせの来客があった。
包帯姿のルーツィエと勾音の二人だった。
『隼人、ちょっといいか?』
『ん?なんすか?珍しいっすね、二人で一緒に…』
『まあ、そうでもないですよ?こう見えてもお茶飲み友達ですし。』
特に理由も聞かされぬまま二人に甲板へと連れ出された隼人。
あんな激しい戦いがあったなどとは思えない地中海の爽やかな空の下、自分達の乗る艇と数100m離れ並行して進む中型船舶が目に入った。
『ところで、なんでわざわざ甲板まで出て来たんすか?』
『ん…、まあ気にするな』
『せっかくの地中海ですし、風に当たるのも気持ちのいいものでしょう?』
さっぱりわけのわからない隼人だったが、二人の見守るような優しい視線の先にある中型艇に目をやった。
よくよく見るとヴィルヘルム家の紋章が掲げられたその艇の甲板には一人和服の人影が見えた。
『…あ!?…沙…紅夜…さん…?』
日本にいるはずだとばかり思っていた愛しき人の姿を認め
『…?泣いてる?…』
一般人では確実に見える距離ではなかったが、人狼であり更に鋭敏な感覚を備えた隼人にはその表情を見て取る事ができた。
『…あ…り…が…と…う…?』
はるか先に見える愛しい人の唇が動きをとらえ、隼人は相手の紡いだ言葉を繰り返した。
涙しながらはっきりと『ありがとう』と呟いた彼女の覚悟を悟った…
普段は飄々としているこの紅い髪の少年もこの時は生来の狼の情熱を隠す事無く哭いた。
『…ぐっ!…沙…沙紅夜さぁーーーーーん!!!』
そんな、一月もたたない忘れられぬ日を思い出し、満開の桜を眺めていた隼人は突然、両手で自分の両頬をおもいっきり張ると
『っしゃぁぁぁぁ!!いつまでも凹んでられるかぁぁ!!』
一吼えすると、勢い良く枝から飛び降りて裏山から駆け下りていった。
隼人のいた枝の幹には
『最愛の沙紅夜さんへ ありがとう』
そう刻まれていた
観賞用BGM:http://www.youtube.com/watch?v=HmVwVDjjWb0
あの人の生まれた季節
寮“戦”の裏山には狂おしいほど美しく咲き乱れる桜の庭園がある
優しい日差しの降り注ぐ中、隼人は桜の大木の豊かな枝に登り一人ぼんやりと桜を眺めていた…
観賞用BGM:http://www.youtube.com/watch?v=MgQpDiOyty8
地面から5mはある高さから枝分かれした逞しい枝の幹に腰掛け赤い髪の少年は先の欧州での戦争を思い出していた。
今まで幾度となく危険な戦場へと出向き、大きな戦果をあげ無傷で帰還してきた若き紅狼
だが、この欧州での戦だけは今までと違った…
いつ命を落とすとも知れぬ死地にあっても恐れを知らぬ獅子奮迅の働きをしてこれた。
その理由は彼を隣で見守り支えてくれた銀の百合のおかげだった。
先の戦いではその美しき銀百合の加護を受けることができなかったのだ…
『…沙紅夜さん…』
ここ数ヶ月、愛しい人の様子がおかしい事には気がついていた。
仕事で忙しい事は知っていたが明らかに会うことを避けられているのを感じていた。
会うのを避けられている理由はわからなかったが、体調がすぐれないのであろうことは狼の嗅覚により体臭の微妙な変化で気付いていた。
今回の戦争でも自分の隣に立つ事はなかった恋人に想いを巡らせてしまった。
戦場ではそんな気の迷いは命取りである。
案の定、たったの3戦目で隼人は敵の人狼の集中攻撃の的となる。
今までであれば難なく回避し逆に敵の懐に飛び込み一蹴しているところだが、気をそらしていた隼人は十字の弾丸に身を焼かれた。
不屈の闘志で4度は立ち上がるも5度目はなかった。
初めて戦争で重傷を負い、その後は野営地で傷の手当を受けたのだった。
からくも遂行必須の目的は果たせた戦だったが、学園の生徒達も過去最大の被害を受けた戦いだった。
ほうほうの体で学園の用意した超大型クルーザーに乗り帰路についた銀誓館の生徒達。
百戦錬磨の“戦”の主戦力の面々も今回は重傷を負ったものがほとんどだった。
船室で包帯を巻きなおしていた隼人のもとに珍しい組み合わせの来客があった。
包帯姿のルーツィエと勾音の二人だった。
『隼人、ちょっといいか?』
『ん?なんすか?珍しいっすね、二人で一緒に…』
『まあ、そうでもないですよ?こう見えてもお茶飲み友達ですし。』
特に理由も聞かされぬまま二人に甲板へと連れ出された隼人。
あんな激しい戦いがあったなどとは思えない地中海の爽やかな空の下、自分達の乗る艇と数100m離れ並行して進む中型船舶が目に入った。
『ところで、なんでわざわざ甲板まで出て来たんすか?』
『ん…、まあ気にするな』
『せっかくの地中海ですし、風に当たるのも気持ちのいいものでしょう?』
さっぱりわけのわからない隼人だったが、二人の見守るような優しい視線の先にある中型艇に目をやった。
よくよく見るとヴィルヘルム家の紋章が掲げられたその艇の甲板には一人和服の人影が見えた。
『…あ!?…沙…紅夜…さん…?』
日本にいるはずだとばかり思っていた愛しき人の姿を認め
『…?泣いてる?…』
一般人では確実に見える距離ではなかったが、人狼であり更に鋭敏な感覚を備えた隼人にはその表情を見て取る事ができた。
『…あ…り…が…と…う…?』
はるか先に見える愛しい人の唇が動きをとらえ、隼人は相手の紡いだ言葉を繰り返した。
涙しながらはっきりと『ありがとう』と呟いた彼女の覚悟を悟った…
普段は飄々としているこの紅い髪の少年もこの時は生来の狼の情熱を隠す事無く哭いた。
『…ぐっ!…沙…沙紅夜さぁーーーーーん!!!』
そんな、一月もたたない忘れられぬ日を思い出し、満開の桜を眺めていた隼人は突然、両手で自分の両頬をおもいっきり張ると
『っしゃぁぁぁぁ!!いつまでも凹んでられるかぁぁ!!』
一吼えすると、勢い良く枝から飛び降りて裏山から駆け下りていった。
隼人のいた枝の幹には
『最愛の沙紅夜さんへ ありがとう』
そう刻まれていた
観賞用BGM:http://www.youtube.com/watch?v=HmVwVDjjWb0
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プロフィール
HN:
犬神 隼人
年齢:
32
性別:
男性
誕生日:
1991/11/24
職業:
銀誓館学園高等部2年生
趣味:
スポーツ・ゲーム
自己紹介:
クルースニク ×
月のエアライダー
純粋結社“戦”に
入寮中。
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当Blog内の作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして犬神隼人が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は犬神隼人に、著作権は各イラストレーターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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